からあげ博士の日常と研究と

博士課程を満期退学した人が好きなことを好きなままに書くところ。

Eマウントの究極標準レンズ、FE 50mm F1.2 G Master (SEL50F12GM)を使ってみた

 こんにちは。からあげ博士(@phd_karaage)です。皆さんはどんな50mmレンズを使っていますか?個人的にはMINOLTA AF 50mm F1.4とお友達になっています。もう数十年前のレンズですね。とはいえAFレンズですからオールドレンズとは言いたくないなという気持ちではあります。

 50mmといえば古から「標準レンズ」と言われ、写真の基本をこのレンズで学ぶのだと言われていた焦点距離の単焦点レンズだと思われます。そういうこともあってか、各社どのマウントからも50mmのF1.4というレンズが発売されていました。そして標準ズームからのステップアップに単焦点レンズを試したい!そういう人向けには廉価撒き餌レンズとしての50mmF1.7やF1.8のレンズがあったはずです。
 皆が買い求める50mm、そのF1.4という上位のレンズですから一定の描写力は求められていたのでしょう。結果的に各社の50mmF1.4の光学設計はダブルガウス型で似通っていて、既に「完成された」レンズであったのかもしれません。
 近年になってミラーレスカメラへの移行が進み、より高画質、言ってしまえば開放でもしっかり解像するレンズが求められてきています。そんな中に現れたSONYの50mm F1.2 G Masterレンズ。F1.2という開放F値のレンズ自体は他社を見渡すと一眼レフ時代から存在したものの、ミラーレス専用設計、さらにG Masterと自信ありげなバッジ。このレンズはどのような世界を見せてくれるのでしょうか?

目次

大きい、重い、そして高い


 ネガティブな見出しですが、一眼レフ時代に標準レンズと言われていた50mmの標準レンズと比べれば一目瞭然の大きさでしょう。そしてレンズキャップを見れば分かるレンタル品であるという証拠。そうです。こんなレンズを自らのお金で買える訳がないのです。という訳でマップレンタルさんでお借りしました。

 MINOLTA AF 50/1.4と比較するとこのサイズ感の違い。この光学系はαがソニーに継承されてから引き続きソニーブランドで発売されていたものと同じものになります。ミノルタ時代に円形絞り化などがなされフィルター径が55mmになっていることからもう少々大きいとは思いますが、極端な変化はないでしょう。

 ソニー発売のAマウントの50mm無印レンズ(SAL50F14)が約220g、その後Zeissバッジをつけて発売された50mm(SAL50F14Z)がフィルター径72mmの518g、そしてこのEマウント最高峰、GMの50mmレンズ(SEL50F12GM)はフィルター径72mmの778gですから、一眼レフ時代の50mmと比べて重いレンズであることは間違いないでしょう。

 その一方で、高性能を謳った50mmレンズで同じくEマウントのZeissバッジをつけたSEL50F14Zと同じ重量、フィルター径であったり、SIGMAの50㎜ F1.4 DG HSM Art(ただしこちらは一眼レフ対応で設計)の880g、フィルター径77mmと比べると、それらより半段明るいこのレンズは「小型軽量」を実現しているのかもしれません。

 ただ長さがあるおかげか、重量バランスが悪いとは感じなかったのは正直なところではあります。

 Aマウントレンズ標準ズーム、SAL2470Zと並べてみるとこんな感じ。サイズ感は大きく変わりません。もっとも重さとしてはSAL2470Zのほうが重い訳ですが。

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 お値段はいずれも価格.com初値で、SAL50F14が41,334円、SAL50F14Zが128,706円、SEL50F12GMが251,460円となっています。気合が入った価格ですね。今は在庫を探し出さないと買えないAマウント50mmの新品が数本買えてしまう金額になっています。

 もっとも無印のAマウント50mmは各社似通った光学系を持つレンズであり、それこそ写真入門の標準とされたレンズだったこともあってか、価格は控えめだったのでしょう。

 レンズはフィルター枠のそこそこまで詰まっていて、ずっしりとガラス感があります。特徴的なのは第1群のレンズが凹レンズになっているところでしょうか。

2つのスイッチ、そして絞りリング

 最近のEマウントレンズには欠かせない存在となっている絞りリング。三分の一段刻みで変更できる絞りリング。ほどよいクリック感があり、使い勝手はよさそうです。よさそうですと言うのは結局使わなかったから。

 オールドレンズ的なクリック感と共に絞りがカチっと変わる訳ではなくバイワイヤーで変わるので絞り動作音自体は無音です。

 このリングをA側に設定しておくことでカメラ側からも絞りが操作可能になります。最小絞り値のF16からAへの遷移は他の絞り値と比べかなり固くなっているので、不用意に操作するといったことはないでしょう。

 側面にあるクリックスイッチをオフにすることで、このクリック感は無くすことが可能です。動画撮影なんかをされる方はこのクリック感はいらないとも聞くので、あるべき機構なのでしょう。

 側面の他に絞りリングとフォーカスリングの間にスイッチがあります。デフォルトではフォーカスホールドボタンのようですが、カメラ側から好きな機能を割り当てられるようです。ボタンが2つついているのは縦位置撮影に配慮してと聞いたことがありますが実際はどうなのやら。

 瞳AFなどに割り当てができるようですが、今回は初代α7Rで、しかもMFで撮影するという最近のソニーのいいところ全無視みたいな撮り方をしているので何とも言えないのが申し訳ないところです。

恐ろしいほどの解像感

α7R + SONY FE 50 F1.2 G Master ISO100, 1/800, F:1.2

 いかがでしょう。圧倒的な解像感とボケ味。レンズを借りてから最初に撮った一枚がこれ。この写真を見て、「あー、これやばいレンズ借りてしまったなあ」と思ったところ。写真として何かを意識して撮ったものではないのですが、等倍まで拡大してみると恐ろしいなという感じ。

 ピント面を見るときっぷの地紋がしっかり解像しているのが分かります。まじで?という感じではあります。

 同じきっぷを自宅でMINOLTA AF50/1.4で撮影するとこんな感じに。

α7R + LA-EA5 + MINOLTA AF 50/1.4 ISO100, 1/160, F:1.4

 等倍で見てみるとこんな感じに。

 正直開放はかなり厳しいですね。解像しているというくっきり感はちょっと薄いなあというのが正直な感想です。それが上の写真のように開放(MINOLTA AF 50/1.4より半段明るい)で撮ってもここまで解像しているのだから恐ろしい限りです。

 ボケ味なんかは割と好きなレンズではあるのですが、過去のレンズはやはり過去のものというのを実感せざるを得なかった、そういう感じです。もちろんAマウントレンズでもよいレンズは多数あるので、そういったレンズとは使い分けという感じでしょうか。

α7R + SONY FE 50 F1.2 G Master ISO160, 1/320, F:1.2

 いつものほむらちゃんにお出ましいただきましょう。ピント面の解像感に前後のボケ味はなんとも言えないものがあります。かなりスムースなボケ味であることが分かります。なるほど、これがG Masterか。

 等倍でピント面を見るとこんな感じ。目のプリントのドットもしっかりと見えます。結構ホコリをかぶってしまっているので申し訳ない気持ちになりますね。

スナップを撮り歩いてみる

 50mmというと標準レンズでこれはスナップを撮らねばならぬ、という訳でレンタル期間は短かったのですがスナップを撮ってきました。

α7R + SONY FE 50 F1.2 G Master ISO2000, 1/250, F:5.6

 新宿駅の南改札。少し絞ると被写界深度が深くなることもあり、きりっとした写真表現をこなしてくれます。このところ広角レンズばかり好んで使っていたこともあって 50mmは少し狭いな、と思ってしまいます。

 この一年ちょっと、α7Rを買うまではα550にMINOLTA AF28mm/2.8の組み合わせでスナップなどを撮ってきたので実のところフルサイズ50mmの画角が身に染みているかというとそうでもないんですよね。換算42mmというのはほどよく感じてしまいます。

α7R + SONY FE 50 F1.2 G Master ISO100, 1/125, F:8.0

 御茶ノ水駅工事中。F8まで絞ってあげて遠景を撮るとしっかりどの領域も解像してくれています。一般に昔のレンズはF8で解像のピークが、と言われていますがこのレンズではどの絞り値でも良好に解像してくれているようで一切の不満のようなものはありません。さすが25万円。

 当ブログおなじみの横断禁止。左からF1.2、F2.0、F2.8となっています。

 引き続き、F4.0、F8.0、F11です。なぜか5.6は飛ばしてた。三脚立てて撮っている訳ではないので構図のずれなんかはありますが、ボケ味を見るにはよいのではないでしょうか。

 被写界深度をコントロールして主題をどう写すのか考える、それが大口径レンズに求められる部分ですが、当然のようにしっかりこなしてくれますね。

α7R + SONY FE 50 F1.2 G Master ISO100, 1/3200, F:2.8

 標識の柱になんかのステッカーを貼ることは褒められた行為ではないですが、まあ、これくらい自己肯定感高く生きたいものです。

α7R + SONY FE 50 F1.2 G Master ISO100, 1/4000, F:1.2

 F1.2で撮ると写真に立体感が出てきますね。この写真はちょっとピントが甘目かなという感じです。被写界深度が浅いのでその点はちょっと気を付ける必要がありますね。

α7R + SONY FE 50 F1.2 G Master ISO100, 1/1600, F:2.0

 自転車と海。看板に穴が開いているのがなんだか味が出ていますね。こちらは歩きながらAFで撮ったものですが、しっかり自転車にピントが来ていますね。もう少し構図を考えながら撮るべきだったかなとは思います。

α7R + SONY FE 50 F1.2 G Master ISO100, 1/800, F:1.2

 口径食は周辺部で結構大きいですね。ただ絞っても円形を保ってくれる範囲は広いので、親の仇の如く「絶対に開放で撮らなければならない」という状況でなければ問題にはなりにくいのかもしれません。

α7R + SONY FE 50 F1.2 G Master ISO100, 1/8000, F:1.2

 比較的被写体に近いゾーンでの前後のボケはやはり美しいですね。それでいてピント面はしっかり解像しているのだから恐ろしいレンズです。とはいえもう少し絞って撮ったほうがよかったのでは?という気がしますね。

ポートレートではどうか?

 せっかくこんないいレンズを借りたのだからポートレートも撮りたい、そう思って撮影させてもらうことに。今回も以前Aマウント Zeiss 135mmの記事でも撮影させていただいたNanashiさん(@na_kawacolle)を今回も撮影させていただきました。

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α7R + SONY FE 50 F1.2 G Master ISO400, 1/1000, F:2.0(Capture One現像)

 古民家+浴衣の撮影ということで、50mmがちょうどよかったですね。背景ボケの美しさは言わずもがな、ピント面の解像性能には驚くばかりです。というか、ここまで解像しすぎるのも、こういったポートレートにおいてはいいのか悪いのか、少し悩ましいところではあります。

α7R + SONY FE 50 F1.2 G Master ISO100, 1/125, F:1.2(Capture One現像)

 こういった明暗はっきりとした写真が個人的な好みだったりします。学部時代に写真部に在籍してたときは、写真展でこういう写真ばっか出してた気がする(そしてA3ノビ対応プリンタの黒インクを浪費して呆れられた記憶)。開放でもこれくらいバシッと決まってくれるのはうれしいところですね。

α7R + LA-EA5 + MINOLTA AF 50/1.4 ISO320, 1/100, F:1.6(Capture One現像)

 こちらは別の機会に撮らせてもらったもの。MINOLTA AF 50/1.4で撮影したポートレート。これはこれで悪くないんだけど、解像感という点においては圧倒的にFE 50 F1.2 G Masterが圧勝なのは間違いないですね。

α7R + SONY FE 50 F1.2 G Master ISO200, 1/500, F:2.0(Capture One現像)

 これくらいバシッと決まると撮ってて楽しいものです。しっかり解像するというのはこういった場面においてちょっと考え物かもしれないと思う一方で、高性能なレンズ、すげーという凡庸な感想に思い至るのです。

買えるなら買うべき標準レンズ

 カメラのレンズは高い。その中においてこのFE 50mm F1.2 G Masterは間違いなく高いほうに分類されるでしょう。ただ買って損はないレンズであることも間違いないでしょう。最安値の店舗で買って25万円。ソニーストアあたりで買えば28万円近いお値段だったはずです。

 買えるならこの一本で撮れるものはいろいろとあるはずです。写真入門においてこのレンズを買う、というのはさすがに高すぎる……というところではありますが。

 50mmという画角が好き、究極のレンズを使いたい、という欲求があるなら買うべきレンズではあるのでしょう。

 1つ不満点があるとすればMFフィールでしょうか。もう少しフォーカスリングが重くてもいいんじゃないかなと思ったり。もちろんソニーとしては優秀なAFシステムと組み合わせてAFで撮ってくれと意図しているのかもしれませんが。

 個人的には買いたくても買えないレンズ、ですね……。 

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