からあげ博士の日常と研究と

博士課程を満期退学した人が好きなことを好きなままに書くところ。

Aマウントレンズで味わうα7Rの世界 ――MINOLTA AF 100/2の場合

 こんにちは。あるいはこんばんは。からあげ博士(@phd_karaage)です。皆さんは100mmあたりと言えばどんなレンズを使っていますか? 私はと言えばSONY Sonnar T* 135mm F:1.8 ZA(SAL135F18Z)でしょうか。100mmよりは少々長いですが、結構汎用性の高いレンズだと思って気に入って使っているところです。

 Aマウントレンズで100mmと言えば真っ先に思い浮かぶのはAF MACRO 100/2.8ではないでしょうか? ボケ味の評価が高く、Aマウント必携とも言われるレンズの1つのような気がしています。

 その陰に隠れてAマウント初期にラインナップされ、NEW化のマイナーチェンジを受けることなくディスコンになったレンズ、それがAF 100/2となります。1990年代にディスコンになった一方で、流通量が少ないにも関わらず、写りはよいレンズであると評価され、今でも中古市場において当時の販売価格程度の値段で流通しているレンズです。

 そんなレンズを現代のミラーレスカメラと組み合わせたとき、どんな写真を見せてくれるのでしょうか。

目次

MINOLTAの100mm

 MINOLTAの100mmレンズと言われれば、真っ先に名が挙がるのがAF MACRO 100/2.8ではないでしょうか。このレンズは銘玉として今でも使っている人が多いレンズでしょう。MINOLTAの100mmといえば発売時期がそれぞれ異なるものの以下のラインナップがありました。

  • AF MACRO 100/2.8 (NEW→(D)までマイナーチェンジ, SONYへ継承)
  • AF 100/2 (NEW化を受けることなくディスコン)
  • AF SOFTFOCUS  100/2.8 (当初からNEW同等? SONYには継承されず)

 このうちAF 100/2だけがNEWになることもなく1990年代前半にはディスコンになったのでした。

 じゃあディスコンになるくらいだし、結構クソな写りなのでは?という疑念を抱く訳ですが、解像感はばっちり、隠れた銘玉などと言われ、生産数が少ないこともあってか現代においても当時の新品販売価格同等のお値段で中古を見ることがあります。

 結局のところ、AF MACRO 100/2.8が圧倒的、ポートレート用途であればAF 85/1.4もあり売れなかったからディスコンになったレンズということなのでしょう。

 今回このレンズは父から借りたものになります。「ブログやってるらしいな。このレンズをレビューしろ」というご用命を受けたので借りたうえでいろいろ撮ってみました。

 当時なぜこのレンズを買ったのかを聞いてみたところ、「MACROはこれより1~2万円くらい高かった。85mmはそれよりも高くて買えなかった。一番安いのを買った感じ」とのことでした。

コンパクトな鏡筒とガラスの塊的な重量感

 鏡筒の長さはそれほど長くない一方で、密度の高さを感じる重量があります。重量は約480gと、軽くもなければ持ち歩くのが苦痛という重さでもありません。私が普段使っているSONYの135mmと比べれば半分以下の重量ですから、むしろ軽いのでは?と思ってしまうところです。

 α7RにLA-EA5を介して装着するとこんな感じに。フィルター径が55mmでレンズの径がマウント径から大きく変わらないこともあって、現代の大きいレンズが持つ「威圧感」といったものはありません。どちらかというとかわいいレンズですねという感じがします。

 フランジバックの短いEマウントカメラにLA-EA5を装着している関係からちょっと長いレンズ、という感じがありますが、Aマウントカメラに装着すると「なんかいいサイズ感」になってしまうレンズです。

 ちなみにこのストラップ、父とお揃いのものを使っています。カメラ付属のものより厚みがあっていいんですよね。

 真横から見るとこんな感じに。太さがないぶんすっきりとしたサイズ感に収まっているように見えます。LA-EA5があるぶん少し長めに感じますが、Aマウントカメラに装着すると、かなりコンパクトなサイズにすら感じます。

AF MACRO 100/2.8と並べてみる

 一応AF MACRO 100/2.8も手元にあるので並べてみましょう。100mmマクロの記事も書きたいなあと思いつつ、こちらのレンズはジャンク品を購入して自分で修理したレンズであるため、後回し後回しになっています。

 このように並べてみると兄弟レンズという感じがしますね。AF MACROのほうが1年早い発売のようですから、しっかり兄貴分という感じがします。弟くんは小さい。

 側面もAF LENS/100 MACROとAF LENS/100と異なっていますね。

 レンズフードは同等のものに異なる印刷という感じです。

 どちらのレンズにもフレアカッターが付いていますね。世代的にはどちらもAマウント初期のものですから、接点は5つとなっています。

開放からシャープな100mm

α7R + LA-EA5 + MINOLTA AF 100/2 ISO:640 SS:1/320 F:2.0

 とりあえずはデスクの上から。結構驚きの解像を見せてくれます。ピント面のシャープさは現代のレンズと同等レベルかもしれませんね。もっとも官能的な評価であって定量的な評価ではないということを留意していただきたいですが。

 ピント面を等倍拡大したもの。かなりしっかり解像しているのが分かるのではないでしょうか。印刷のドット模様がなんとなく分かるくらいには解像しています。

 ちなみに今回モデルになっていただいたのはいつもの暁美ほむらちゃん(悪魔ver)ではなく、VTuberの白雪みしろさんのアクリルスタンドフィギュア。これにも少々訳があります。

α7R + LA-EA5 + MINOLTA AF 100/2 ISO:100 SS:1/3200 F:2.8

 その訳とは、端的に言って「寄れない」ということですね。最短撮影距離は1mともうちょっと寄りたいんだけどなあという要望にはお応えいただけないレンズとなっております。

 デスク上では悪魔ほむらちゃんが比較的近い位置にあり、座りながら1mを確保できないのに対し、白雪みしろさんのアクリルスタンドフィギュアでは1mを確保できた、ただそれだけの理由です。

 ただこの写真ももう少し寄りたかった。というのは正直なところですね。一段絞るとバキバキの開放描写からさらに解像感が上がります。

 等倍表示するとこんな感じ。これはすごい。

α7R + LA-EA5 + MINOLTA AF 100/2 ISO:100 SS:1/3200 F:2.0

 解放でバリバリに写るというのは、ついうっかり開放、あるいはその近傍でしかシャッターを切れない、絞ることを忘れてしまった開放主義者にとってはありがたいレンズであることは間違いないです。

 自分が遊びで使っているIndustar-69のように現代のミラーレスカメラで開放を使うと「終わった」描写になるレンズと比べれば天と地の差ではあります。そもそもIndustar-69はその「終わった」描写を楽しみたくて使っている訳ですが。

www.phd-karaage.com

 

α7R + LA-EA5 + MINOLTA AF 100/2 ISO:100 SS:1/2500 F:2.8

 こういうのはもっと絞ったほうがいいのでは?というのはその通りですねと言わざるを得ない。これが開放主義者の悲しいところ。

ボケよりは解像を重視したレンズ

 さてこのレンズ、開放から使えるサイコー!なレンズかと言われるとなかなかに微妙なところ。

 研究室で撮った人物写真で、被写体からアップロードの許諾を得られなかったので人物をマスクしていますがボケは結構ニ線ボケ傾向が強いです。その一方で口径食の形は周辺部でもレモン型とはいえ結構綺麗な形かなと。

 ただ、ここまで二線ボケ傾向が強いとは思っておらず、この写真を見てから思わず父に電話をかけてしまったのでした。「フィルムの頃から思ってたけど、二線ボケは結構強いね」とのことだったので、ああ、こういうもんかと納得はしました。

 背景を選ぶ必要があるという意味ではポートレートにバリバリ向いてまっせという訳にはいかなそうです。

α7R + LA-EA5 + MINOLTA AF 100/2 ISO:100 SS:1/1600 F:2.0

 この写真は後ろがすだれになっていますが、ちょっとうるさいかなあと思ってしまうのは贅沢なお悩みでしょうか。こういった写真を撮るならいっそ絞り込んで背景もきっちり出してしまったほうがいいのかもしれないと思ったところです。

 解像とボケというのはどうもトレードオフの関係があるようで、

www.sigma-sein.com

 この記事でもエンジニアによって光学設計について書かれていますが一部を引用すると

高解像ばかりを追いかけていくとボケが汚くなりがちだ。

 とのこと。「ボケ味のミノルタ」とは一線を画する解像を重視した設計なのかもしれません。現代におけるレンズ設計においても高解像とボケはある種の天秤が必要なようですから、40年近く前の設計となるとなかなか難しい判断があったのかもしれませんね。

 三脚も立ててない、露出も微妙に違うという写真で比較をするなと怒られそうなものですが、シャープである一方でフリンジもしっかり出てきます。

 こうした古いレンズを持ちだし、3600万画素の暴力で撮影し等倍鑑賞して「フリンジ!フリンジ!」と罵り倒すことに何の意味があるのか、それについては甚だ疑問ではあるものの、こうした特性があることを理解しておくことは必要でしょう。

 さらに言えばこの程度は現像で消せますしね。

ポートレートで100mm

 100mmで大口径と言えるこのレンズ、開発当初からポートレートも意識していたに違いないでしょう。ということでポートレートも撮影してみました。モデルはこのブログではもはやおなじみとなったNanashiさん(@na_photojp)にお願いしました。

α7R + LA-EA5 + MINOLTA AF 100/2 ISO:100 SS:1/3200 F:2.0

 背景をもう少し選ぼうよ。という感じは否めないですね。ただこのレンズの特性というのをしっかり表せている一枚ではないかなという気もします。草木が入るとちょっとボケのスムースさが損なわれてしまう、そんな感じです。。

 これ以降ポートレート写真はすべてCapture One Pro 22で現像していますがシャープニングおよびフリンジ軽減はすべてデフォルトになっています。

α7R + LA-EA5 + MINOLTA AF 100/2 ISO:100 SS:1/320 F:2.8

 100mmで寄り、かつ背景が人工物の場合はそれほど二線ボケは気にならないかなという描写です。このレンズのシャープさが際立ってくれるおかげでかなりよい描写をしてくれます。

α7R + LA-EA5 + MINOLTA AF 100/2 ISO:100 SS:1/1600 F:2.0

 背景はススキですが、結構大胆に飛ばしてしまえば植物体がもたらす二線ボケも気にならなくなりますね。ただススキを生かせてないという意味でいいのか悪いのかは別問題ではあります。

 このレンズを生かすも殺すも、結局のところ撮影者次第であるというのは否定できないところ。

α7R + LA-EA5 + MINOLTA AF 100/2 ISO:100 SS:1/1250 F:4.0

 背景がうるさくなる予感を感じたならいっそ絞ってしまうというのもありなのではないかと。F2という開放F値はその自由を撮影者に与えてくれます。

 絞るべきときに絞る、開放主義者が忘れがちなところではありますが、もう一段くらい絞ったほうがよかったかな?とも思います。

MINOLTA AF MACRO 100/2.8と比較する

 さて気になるのはMINOLTA AF MACRO 100/2.8との比較ではないでしょうか。ポートレートを撮らせてもらう際に比較をしてみましたので、こちらも併せて掲載します。

 厳密な比較ではないため、露出も合わせてなければ三脚も使っていない。撮影位置も微妙に異なるという、官能評価としても最悪なサンプルではありますが参考までに。せめて絞りはどちらもF2.8で揃えています。

 一応左がMACRO 100/2.8で撮影したもの、右が100/2で撮影したもの。一段絞ったこともあってか右のほうがピント面はシャープに思えます。ボケ味としては同等かなあという気がしますが、皆さまとしてはいかがでしょうか?

 こちらは絞り値すら揃えなかったパターン。ある意味ではどちらも開放に揃っているといえます。開放で路面という分かりやすいパターンのおかげでどちらも軸上色収差が出ているなあというのが分かるかなと。

 こちらも左がMACRO 100/2.8で右が100/2で撮影したものになります。開放であってもピント面のシャープさという意味では100/2が有利です。F2ということでボケ量が大きく「映える」のは100/2かもしれませんが、コスパという意味ではMACRO 100/2.8が圧倒的とも思えてしまいます。

α7R + LA-EA5 + SAL135F18Z ISO:100 SS:1/500 F:2.8

 中望遠、ポートレート?それならSONY Sonnar T* 135mm F1.8のほうがいいでしょ?とちゃぶ台返しをしてしまうのは恐らく無粋というやつでしょう。ただこのレンズが一番好きなのも事実。

開ける自由、絞る自由

α7R + LA-EA5 + MINOLTA AF 100/2 ISO:100 SS:1/8000 F:2.0

 AF MACRO 100/2.8に食われて、そして消えていった(本当にそうかは分からないが)このAF 100/2というレンズ。じゃあ単焦点として買う価値のなかったレンズかと言われると、決してそんなことはないかなと、このレンズを借りて思ったのでした。

 AF MACROはマクロ域も撮れる、ボケもよいと持てはやされ多く売れたレンズでしょうし、実際使ってみるとその汎用性の高さを感じます。持っておくべき単焦点レンズの1本であることは間違いないでしょう。

α7R + LA-EA5 + MINOLTA AF 100/2 ISO:100 SS:1/320 F:2.8

 ただこのレンズも、バシッと決まるとかなりいい描写、それも現代のミラーレスレンズに引けを取らないような描写を見せてくれるときがあります。開放からしっかり写ってくれるこのレンズは、絞りを開ける自由、絞る自由をAマウントの100mmに与えてくれるのかなと。MACROより1段明るい、たった1段だけど大きい1段のようにも感じます。

 もっとも、私のような「開放主義者」にとっては無意味なのかもしれませんが。

(左)α7R + LA-EA5 + MINOLTA AF 100/2 ISO:100 SS:1/400 F:5.6

(右)α7R + LA-EA5 + MINOLTA AF 100/2 ISO:100 SS:1/3200 F:2.0

 絞ってシャッキリとした描写を楽しむのか、それとも開放主義に則って大きく減光する周辺部を含めて楽しむのか、それは所有した人次第なのでしょう。

個人的な結論

 最近個人的に見ているYoutuber(carwow 日本語 - YouTube)的に4段階、Avoid(買うな), Consider(考慮に値する), Shortlist(比較検討リストに入れよう), Buy(買え)で評価するならば、Consider(考慮に値する)というあたりでしょうか。

 Aマウントユーザーが現代において100mmで買うべきレンズはAF MACRO 100/2.8、あるいはその後継のSONY 100mm F2.8 MACRO(SAL100M28)が最もコスパがよいと感じられ、このレンズに関して言えばコスパは非常に悪いといえるでしょう。生産終了から約30年経っていて状態のよいレンズが少ないこと、中古市場で4~6万円程度支払うことを考えれば、ほかにも良いレンズが見当たります。

 一方で当時の定価で考えるならば悩ましいところです。AF MACRO 100/2.8よりも1~2万円程度安く、マクロ域を使うことはないと言うならばこのレンズは買うべきレンズになったのかもしれません。実際に私の父はそういう割り切りのもとでこのレンズを購入した訳ですし。

 今購入するとしてどうしても100mmがよく、MACROより一段明るいレンズが欲しいのであればこのレンズ以外に選択肢がなく、その上でボケと解像を考えるのであれば買ってもよいレンズであるといえるでしょう。

 100mmである必要がないのであれば、SONY Planar T* 85mm F1.4やSONY Sonnar T* 135mm F1.8が見えてきます。中古価格で言えばこの100mm F2よりも高いですが、設計が20年ほど新しいことを考えればこの価格差も受け入れやすいのではないでしょうか?

 ただ、今このレンズを所有している人が、中古市場が高騰している今手放して別のレンズを購入すべきかと言われると悩ましいところです。恐らく一度手放すともう一度買い戻すことは困難になるでしょう。マウント一式乗り換えます、もうAマウントは使いませんというのであれば売り払ってもよいかもしれませんが。

 父からは6万で買わないか?なんて冗談を言われますが、個人的にはあれば使いたいけど、その値段を出すのは厳しいかな……という結論です。