からあげ博士の日常と研究と

博士課程を満期退学した人が好きなことを好きなままに書くところ。

Aマウントレンズで味わうα7Rの世界 ――SONY Distagon T* 24mm F2 ZA SSM(SAL24F20Z)の場合

 こんにちは。からあげ博士(@phd_karaage)です。

 年度が改まりそれなりに忙しい日々を過ごしていました。書きたいことは多々あれど、なかなかブログにまで意識がいかない日々となっていました。

 その一方で忙しさからくる衝動買い、のようなものがいくつか起きていたのでした。その1つが今回紹介するDistagon T* 24mm F2という単焦点レンズ。 

 24mmという焦点距離をめちゃくちゃ重視しているかと言えばそうでもなく、さらに言えばMINOLTA AF 20mm/F2.8に割と満足していたのですが、どこからともなく聞こえてくるDistagonはいいぞ、という声についうっかり買ってしまったのでした。

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 カメラ屋さんで話を聞いてもSONY Aマウントだったら、24mm, 85mm, 135mmは必須。50mmはZeissか無印かはお好みで。みたいな話をよく聞きます。いわゆる「必須」レンズは残り85mmだけ。この沼から解脱できる日は来るのでしょうか。

目次

現代のレンズから比べると大きい見た目


 α7RにLA-EA5を介して装着するとこのような感じに。フードなしでずんぐりむっくり感がありますが、付属の花形フードを装着すると結構な威圧感が出てきます。これで24mmか?という風格です。所有こそしてないものの、家電量販店で見かけるEマウントのGレンズ、20mm/1.8(SEL20F18)と比べると一回り以上大きいように感じます。

 同焦点距離のGMレンズ、24/1.4(SEL24F14GM)と比較しても重量はこちらが重く(555g+88g vs 445g)、さらに1段暗く(F2 vs F1.4)、外径もこちらが太い(78mm vs 75.4mm)と一切の勝ち目がありません。今最高の性能を求めてレンズを選ぶならば、このDistagon T* 24mm F2を選ぶ道理はないと言えます。

 GMレンズなんか買えないわ!と仰る方も多いかと思いますが、シグマのContemporaryシリーズで24mm/F2 DG DNというレンズが発売されています。こちらはこのレンズの中古相場程度のお値段で新品が買えてしまうという素晴らしいレンズ。使ったことはないけれど、スペックだけを考えるならやはりこのDistagon T* 24mm F2を選ぶ道理はないと言えます。

 見た目の話に戻りましょう。側面にはソニー製Zeissバッジ付きのSSMレンズについているAF, MF切り替えスイッチが付いています。その中央にはフォーカスホールドボタンも。

 頂上にはしっかり距離窓もあります。Aマウントレンズらしさ、はきちんとあります。

 フィルター径は先述の通り72mm。付属しているフードはプラスチック製です。このプラスチック製フードには賛否がありますが、個人的には軽くなっていいのかなと。ちょっと着脱しにくいような気もしますけどね。

広角レンズといえば風景から?

α7R+LA-EA5+SAL24F20Z, ISO:100, 1/250, F:8.0

 広角レンズを使うシチュエーションとしてまずは第一に風景写真が挙げられるような気がします。ここは北海道のメルヘンの丘。24mmという画角はちょっと広すぎたかもと思いつつカメラを向けてみます。

 結構な距離のある木々ですが、中央部を等倍表示してみてもα7Rの約3600万画素で十分解像していると言えるのではないでしょうか。なかなかいい写りをしているような気がします。

 色の出方としては夕日の赤とまだ残る青色がほど良い感じで出ています。決してコントラストが非常に強い不自然な写真になっていないところに注目すべきなのかもしれません。

α7R+LA-EA5+SAL24F20Z, ISO:320, 1/60, F:8.0

 ところ変わって場所は新宿。新南口から写した一枚。こうした風景、特に都市風景なんかはきっちり解像することを良しとする訳ですが、まあまあしっかり解像しているのではないでしょうか。

 割と中央よりの部分を等倍で表示するとこんな感じ。もしかしたらより新しいレンズのほうがよりくっきり解像してくれるのかもしれませんが必要十分な気がしています。もっともF8.0まで絞っていてこれくらい解像してくれないと困る、というラインでもある気はしますが。

 一方で周辺はというとこんな感じ。ちょっと厳しいなあと言うのが正直なところ。ユニクロロゴ付近の植物はあまりしゃっきりしませんね。最周辺はちょっと流れているかなという印象。これくらい絞っていて結構距離もあるはずなので、パンフォーカスと言えるはずですが、この辺りはちょっと無理があるかなあという印象です。

 もっとも、重箱の隅をつついて最周辺はよろしくないと言い切ることになんのメリットがあるのか、と言われれば微妙な話ですが。

α7R+LA-EA5+SAL24F20Z, ISO:100, 1/640, F:8.0

 ところ変わって福岡空港の展望デッキ。ここってあまり長いレンズじゃなくても結構しっかり飛行機を撮れるんですよね。こういった24mmのレンズでもしっかり機体が大きく写ります。一番手前は日本航空のA350。

 比較的コンパクト、と言い切ることはできないものの、旅に持っていくレンズとして第一候補に入れたいこのレンズ。こうした風景をしっかり切り取ることができるレンズであることは間違いないです。

 尾翼部分を等倍で切り出し。F8.0まで絞っているとはいえここまで解像してくれるなら個人的には文句はないですね。もっとも最新のレンズに触れていない自分の意見ではあるので異論は認めます。

このレンズの持ち味はボケ味

α7R+LA-EA5+SAL24F20Z, ISO:500, 1/125, F:2.0

 じゃあこのレンズは現代のレンズに劣る、買う価値のないレンズと言えるのでしょうか。個人的には否です。ピント面はそれなりに解像し、ボケは自然になだらかに。それを実現しているのがこのレンズの魅力であると思っています。

 使ってみて近接で撮ってみて「なるほど」と思ったものです。

 ピント面はこんな感じ。それなりに解像している。というのはお分かりいただけるのではないでしょうか。ただ注目すべきはピント面以外のボケ方でしょう。ざわつくようなボケ感は一切なく、自然にアウトフォーカス部分のボケが展開しているのが見て取れます。

α7R+LA-EA5+SAL24F20Z, ISO:100, 1/2500, F:2.0

 このレンズが与えるボケ感は写真に立体感を与えるのに大変よく寄与してくれているのではないかと思うのです。ちょっとしたスナップでも、さもいい写真のように見せてくれる、そういう魔力があります。絞りの効果として被写界深度をコントロールする、というそういう役割をきちんと思い出させてくれるレンズである気がします。

α7R+LA-EA5+SAL24F20Z, ISO:100, 1/100, F:2.8

 その辺にあるシロツメクサであっても、なんだかストーリー性のあるような写真に見えるのは気のせいでしょうか。こうした演出を自然なボケ味によって演出してくれる。これがざわつくようなボケであったなら、この写真は台無しでしょう。

 そういう意味でこのレンズは開放かそこから1段絞ったあたりで使いたくなるレンズ。そんな感想を抱いています。

α7R+LA-EA5+SAL24F20Z, ISO:100, 1/5000, F:2.8

 こうした写真であっても、なんとなく背景のビル群がぼやけてくれるおかげで写真の中にメリハリが現れてくれます。現代のレンズであればバリバリのシャープさが求められるのかもしれませんが、なんというかこういうのでいいんだよなと思わせてくれる感じですね。

寄りでボケを生かした作品づくり

 とにもかくにもこのボケ味を生かした写真を撮りたくなるものです。24mmという広角レンズでボケを生かすならとことん被写体に近づくことが求められます。

α7R+LA-EA5+SAL24F20Z, ISO:400, 1/125, F:2.8

 自分のデスクの上でレンズキャップを撮影。前後ボケのなだらかさがうかがえますね。これでほぼ最短撮影距離だったはずです。24mmでもここまでボケを出せるのねという感じです。

α7R+LA-EA5+SAL24F20Z, ISO:100, 1/5000, F:4.0

 額縁構図応用編という感じでしょうか。川がいい感じにボケてくれていますね。これくらいの距離感であれば、この背景ボケをしっかり生かせるのではないか、そんな気がしています。

勇気のいる24mmポートレート

 24mmのこのレンズでポートレートも撮ってみました。今回もNanashiさん(@na_kawacolle)を撮影させていただきました。

 24mmのポートレートってあまり見ないですよね。まあ撮ってみて思いました。想像以上にモデルさんに寄る必要があります。初対面などでいきなり24mmからスタートはちょっと厳しいだろうなという感想です。

α7R+LA-EA5+SAL24F20Z, ISO:100, 1/800, F:2.0(Capture One現像)

 全身を24mmで。背景をきちんと整理できればこういった使い方は悪くないんじゃないかなという感じ。ただ、F2.0だとちょっと甘目に写るかなあという気も。もう一段くらい絞るべき気もするし、これはこれでいいような気もするなあという感じですね。これでも1~2mくらいの距離感ですから、ポートレート撮影としては結構近めな気がします。

α7R+LA-EA5+SAL24F20Z, ISO:200, 1/800, F:2.8(Capture One現像)

 一段絞りつつ寄ってボケを生かそう、そんな意図の写真ですね。この距離だと、ほぼ銃口を突き付けているような距離感になります。生かしたい背景がなければ24mmでなくてもいいような?という感じはしますね。

α7R+LA-EA5+SAL24F20Z, ISO:800, 1/160, F:2.8(Capture One現像)

 背景も生かしたメッセージ性の高そうな写真を撮るには結構使えるんじゃない?という気はします。恐らくポートレート好適とされる85mm、135mmあたりだとこういった写真は厳しいでしょう。

 ほどよく主題がボケつつ、背景からもなにかを発信するような写真、そういったものを撮りたいときこのレンズが生きてくる気がしますね。

Aマウントであれば必携、Eマウントだとどうだろう?

 先述したとおり、Aマウント24mmはこのレンズで決まり!みたいな話はよく聞きます。代替可能な明るいレンズがあまりない、という意味でもこのレンズは必須でしょう。この焦点距離であれば、MINOLTA AF 24mm/2.8もありますが、SONYに引き継がれることなく販売終了となったようです。また、SIGMAからは24mm F1.8 EX DGとこのレンズよりも明るいレンズが発売されていましたが、あまり評判は聞かないあたりどうなんだろうという感じではあります。

 ただ、Eマウントで使うことを考えると、代替可能どころか主力となるレンズが多数あります。先に挙げたSEL24F14GMだったり、SIGMA 24mm F2.0 DG DNなどです。今後はSIGMAから24mm F1.4 DG DNが発売されるそうで、この焦点域のレンズは何気に充実しています。

 まだまだ使えるレンズだろう、というのは自分も使ってみて感じたところですし、このボケ味は結構好きだなと思うところですが、中古価格と現行製品の価格を見比べたときにコスパという観点で考えると非常に悩ましいところではあります。LA-EA5など純正マウントアダプターを既に持っているなら買ってもいいんじゃない?自分ならそう言うでしょう。

 ただまあ、コスパという観点を持った方々がこのレンズに興味を持つのか?それは甚だ疑問ではあります。私は既に沼の奥深くにいる人間のような気がしてならないのです。