からあげ博士の日常と研究と

博士課程を満期退学した人が好きなことを好きなままに書くところ。

Aマウントレンズで味わうα7Rの世界 ――MINOLTA AF 50/1.4 (旧)の場合

 こんにちは。巷では山賊と名高いからあげ博士(@phd_karaage)です。というのもこのレンズの入手経路に由来する訳です。山賊、略奪、強奪、どのように言われても文句は言えない訳です。もちろん合意の基に頂いたレンズですから、なにか刑法に触れる方法によって入手した訳ではありません。

 時はもう10年ほど前でしょうか、α100を買った私の親戚がMINOLTA 28/2.8とMINOLTA 50/1.4を所有しておりました。彼はこれまでフィルムでフルサイズを相手に撮影していた訳ですから、これらレンズは1.5倍の焦点距離になってしまう訳です。彼は大変困りました。広角側のレンズが欲しいと。そこにα550レンズキットを買った私が現れました。私としてはキットレンズは飽きた。18-55の焦点距離はよいにしても、明るいレンズが欲しい、もっとボカした写真が撮りたいとレンズ交換式カメラを所有した者が陥る症状に陥っていた訳です。

 そうなると話は簡単です。18-55のキットレンズとこれら2つの単焦点レンズは交換と相成った訳です。完全に合意の基です。今にして思えば単焦点レンズ2本をAPS専用ズームレンズと交換するなんてことはあり得ない話で、山賊、略奪、強奪などと言われても仕方ないところです。交渉が成立してから10年ほど、親戚の好意に甘えつつこうして私の手元にこのレンズたちがいる訳です。

 さて、くだらない話が長くなりましたね。今回紹介するMINOLTA AF 50/1.4(旧)について見ていきましょうか。

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 今回機材写真はXperiaで撮影したものですが、これはちょっと撮りなおしたほうがいいかもしれませんね。

ああ、ミノルタレンズだよねという外観

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 大変コンパクトな鏡筒に、50mmの開放F値が1.4のレンズが収まっています。重量も軽く、235gほど。パンケーキレンズとは言い難い厚みではありますが、これでF1.4の明るさを実現しているのは素晴らしいでしょう。

 

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 このように手のひらに載せても痛くもかゆくもない重さです。私は特段手が大きい人間という訳ではないですから、サイズ感をお分かりいただけるのではないでしょうか。

 ちなみにこのレンズ、フードを紛失したとかそういった話ではありません。そもそもフードがない訳でもありません。ではどこにあるでしょうか?

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 鏡筒内に内蔵されています。申し訳程度のフードで果たして効果があるのかは謎ですが、実際に内蔵されている訳です。ちなみにこの写真で最大位置まで出しています。これが不評だったのかは知りませんが、マイナーチェンジ版のNew、およびソニー継承後のSAL50F14では丸形バヨネットフードが付属しています。

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 ちなみにこのレンズ、ひょんなことから入手したAI Nikkor 50/1.4とスペックがほぼ同じなんですよね。最短撮影距離も同じだし、レンズ構成も同じです。後者はAFが使えませんが。ちなみにミノルタはフィルター径が49mm、Nikkorは52mmとなっています。

 ミノルタ版におけるこのレンズの後継であるAF 50/1.4 Newについてはフィルター径が55mmとなっているのも興味深いところです。

 絞りがどちらも円形でないというのもポイントです。なおミノルタのNewおよびソニー版については円形絞りとなっています。

 結局のところ、フィルム時代における50mm F1.4というレンズはすでに完成されたレンズだったということなのでしょう。

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 α7R初代に装着するとこんな感じに。かなりコンパクトにまとまるなあという印象です。もっともEマウントレンズの中にはもっとコンパクトなレンズが存在することでしょうし、MFしか使えない(一部機種を除く)レンズを、コンパクトで取り回しがよいレンズと現代において褒めたたえるのは難しい部分でもあります。

 恐らくはコンパクトなレンズが欲しければGレンズ三兄弟あたりを買っておくほうが幸せになれることでしょう。 

 こちらのほうが2段も暗い訳ですが、AFも動く、コンパクト、なによりマウントアダプタが不要というメリットがある訳です。50mmの焦点距離となると、高価なレンズかF1.8という撒き餌レンズのどちらかが想像されますが、Eマウントにも同様の製品が存在します。F1.8という撒き餌が嫌でなければ、LA-EA5に新品のSAL50F14なんていう狂気の選択肢ではなくこちらを買うべきではないでしょうか。中古であってもこの50/1.4はなかなかいいお値段がするのです。逆に未だに新品で買えるというのもすごい気はしますが。 

 逆にEマウントカメラを購入した人間に対してレンズ沼へ誘うならばこのレンズを真っ先に勧める次第であります。使ったことないけど。

今回のベストショット

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α7R+LA-EA5+MINOLTA AF 50/1.4 ISO 800, 1/160, F2.8

 なんだ大したことない写真じゃん、という感じではありますが、このレンズの特徴を一番とらえている写真なんじゃないかなあという気がしています。暗いところに強い、というのは大口径レンズにおいて当然なのですが、暗いところの色味に強いと言いましょうか。以前紹介したMINOLTA 50/2.8 MACROが昼のレンズとするならば、こちらは夜のレンズでしょう。

www.phd-karaage.com

 絞ればピント面はシャープに、ボケはMACROよりも綺麗な気がしています。もちろん、レンズには得手不得手がある訳で、昼間の作例を見るとこのような感じになります。

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α7R+LA-EA5+MINOLTA AF 50/1.4 ISO 100, 1/400, F2.8

 もちろん悪い写真ではないでしょう。しゃっきり解像していてボケも生きている。メリハリのあるレンズであることは間違いないと思います。ただこれが50mm MACROだったらもう少し温かい色を出してくれたんじゃないかなあなんて気がしてしまうのもまた事実。

 もっともこんなものはRAW現像でどうにでもなる今、気にする必要はないのかもしれませんね。

ボケはいいよね

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α7R+LA-EA5+MINOLTA AF 50/1.4 ISO 100, 1/640, F4

 きっちりと解像するところは解像し、ボケはミノルタらしいふんわりボケ。絞ると味が出てくるような、噛めば噛むほどおいしいような、そんなレンズである気がします。マクロで気になった2線ボケ傾向はなく、案外近接撮影で美味しいレンズなのではないか、という気がしています。もちろん最短撮影距離が0.45mと寄れるレンズではないのですが。

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α7R+LA-EA5+MINOLTA AF 50/1.4 ISO 250, 1/60, F2.8

 こうしたちょっと暗いところで少しぼかしていくような作品には味があって大変いいレンズなのではという気がします。このボケ方、個人的には大好きです。

主役の夜の作例を

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α7R+LA-EA5+MINOLTA AF 50/1.4 ISO 5000, 1/60, F2.8

 某大学構内を夜に撮影した写真。シンメトリーに撮りたかったけどうまくいかなかったなあという感じではありますが、この色味、解像感、なんか良くないでしょうか?現代のレンズのようにカリッカリという訳でもなく、そして夜の明かりのホワイトバランスにマッチした色味。

 このレンズ活躍の場はやはり夜だな、と再確認してしまった訳です。

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α7R+LA-EA5+MINOLTA AF 50/1.4 ISO 400, 25sec, F1.4

 レンズの明るさを生かしてこのような星景写真も行ける訳です。ちょっと長く開けすぎて少し星を流してしまいましたが。星景写真についてはまだまだ修行が必要です(他の写真も修行が必要ではありますが)。

 ただ開放となるとこの後の作例でもお見せしますが、ちょっと甘さが目立つかなあというのは正直なところです。

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 ピン甘、シャッターショックというのを除いたとしても、まあまあの甘さではあります。等倍で見なきゃいいのでは、という話ではありますが。

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α7R+LA-EA5+MINOLTA AF 50/1.4 ISO 250, 1/60, F1.4

 開放だとやはりピント面はちょっと甘いかなという印象を持ちます。絞ればいいんだけど、夜に主役だよね、君、という気持ちがあります。やはり現代のカリカリ解像を追い求めた重いレンズにはなかなか勝てるものではないでしょう。

 また口径が小さいということもあり、盛大なレモンボケが発生します。ぐるぐるというより完全なレモン。完全な円になっているのは本当の中央部くらいであとはレモン。イルミネーションをボカしながら撮りたい、というのはなかなか厳しいものがあります。一方で夜の明かりや雰囲気自体はしっかり生かせているんじゃないかなと思うあたり、このレンズを使いこなすにはまだまだ修行不足なのかもしれません。

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α7R+LA-EA5+MINOLTA AF 50/1.4 ISO 1000, 1/60, F2

 F2くらいまで絞るとなかなか口径食も気にならなくなります。もちろん距離の問題もありますが。ただ、今度はこのレンズ、円形絞りじゃないのよねという事実を思い出してしまう訳です。F2でも絞りの形が角ついてきているのが分かります。

 ただこれくらい絞るとピント面の解像はカッチリしてくるという面白さもある訳です。そのトレードオフをどれくらい認めてあげるか、というのもこのレンズを使う上で重要なのかもしれません。

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α7R+LA-EA5+MINOLTA AF 50/1.4 ISO 250, 1/60, F1.4

 これくらいの距離感であれば口径食はあまり気になりませんから、大きな玉ボケを狙うのではなく、夜の雰囲気をうまく切り取るレンズ。そう思っておくことが一番いいのかもしれません。いい玉ボケを撮りたかったらいいレンズを買おう。そういう話でしょうか。 

 恐らくいいレンズであることは間違いないでしょうが、玉ボケを狙うためだけに買えるレンズではないでしょう。少なくとも僕は買わない(買えない)。

明るいレンズとしてAマウントユーザの沼には悪くない

 50/1.4というレンズが新品でも3万円台、中古だと1万円台で買えるとなると大変なお買い得感があります。ただそれは設計がもう何十年も前のレンズであり、開発費をもう既にペイしたレンズだからできるものなのでしょう。

 しかもソニー版ではなく、このMINOLTA AF 50/1.4(旧)は大きく投げ売られていることもあり、お買い得に買えるレンズの1つです。

 しかしながら、新たなAマウントレンズユーザが増えることは想定できず、必然的にこのレンズをお勧めできる人は限られてくる訳です。仮にLA-EA5ユーザにオススメするとしても、このレンズは既に持っている可能性が高いでしょう。

 逆に、LA-EA5を持っていてこのレンズを持っていないなら、あるいは手動マウントアダプタ使用でAマウントに興味があるなら悪くないと思います。Eマウントユーザがもし新品3万円で買うというならさすがに止めますが、中古店で、あるいはオークションで、ふらっとお得に見つけることができたなら使ってみるのはありだと思います。

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α7R+LA-EA5+MINOLTA AF 50/1.4 ISO 2500, 1/60, F2

 夜を切り取る、悪くないレンズだと僕は思っています。